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水野南北 著 「修身実験録 一名・出世の直道」を読む その18 修身実験録&意訳(問答3)

問て曰く、

先生近来はしきりに飲食の事をのい弁じたまへども、飲食も常に腹に飽かしめざれば、美味を見し時、たべたしとの食念を引きおこして、なかなかに餓鬼趣の衆生にも似やせん。況や食は生命を養ふの尤も大切なるものをや。

 

答て曰く、

食は固より生命を養ふの尤も大切なるものなり。されど大食暴食をなせば、これによりて生命をそこなふ。肥料は草木に尤も大切なるものなれど、その度を過ごせば肥料かへりて草木を枯らすがごとし。人はさすがに萬物の霊なれば、かかる道理はよく知りながら、食欲の一念に使ひまはされて醇醸を暴飲し美味を大食するは、たとへば己が命を的にして、弓を引き矢を放つがごとし。是れみな心賤しきものの所為ならずや。おのが心いやしきゆゑに、食べたしとの欲念おこるなり。若し疑はしくは鳥獣を見よ。彼等は日夜にかけまはりて物を食するを楽みとす。萬物の霊にして斯くの如くは、子はこれを餓鬼趣の衆生といはるれど、予は寧ろ畜生道衆生と見做さんのみ。