問て曰く、
釈尊は雪山に於て修行ましませし時、粟六粒を以て一日の食とし給ふといへり。粟六粒にて身体を養ふことを得べしやいなや。
答て曰く、
凡そ生あるものの食を須(ま)つは天地の道理なれば、たとひ釈尊といへども粟六粒にて一日の性命を養ひ給はんことは叶ふまじ。是れはおのが持ちて生まれたまひし太子の食禄をなげうち捨てて、悉く天地に供養したまひし誓願のいみじきを称賛して、斯くは傳へたるなるべし。果たせる哉その食徳つひに六合に満ちわたりて、年をかさね世を経るほど、その法いよいよ盛んなること仰ぐべし学ぶべし。