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水野南北 著 「修身実験録 一名・出世の直道」を読む その30 修身実験録&意訳(問答15)

問て曰く、

予は諸事倹約を旨とせしより、衆人にあしく思はれ、下人等そだちがたし。されば今より倹約をやめ申さんか。いかが。

 

答て曰く、

汝は倹約と吝嗇とを取りちがへしものと見えたり。汝の謂ゆる倹約は、下人に飲食をひかへさせ、與ふべき金銀をも與へず。施すべきものをも施さざる等なるべし。これみな倹約にあらで。ことごとく吝嗇の所作なり。故に下人は内にありて金銀をかすめ、目がはづるれば飲食を驕りて、その家の不為をはかる。他人は外にありて謗り悪(にく)みて、その人の不利をよろこぶ。これ皆倹約と吝嗇との間違ひよりおこれり。まことの倹約は始終本末にわたりて、物ごとをつつまやかにしめくくり、天地の徳の厚きことを知りて、萬物を無用に費さず。日月の徳の尊きことを知りて、光陰を無駄にわたらず。己れ一分の飲食および諸事を厳重に慎み守るときは、家内もつひに見ならひて和順し、おのおのまことの倹約にいたるものなり。よくよく思ひ弁(わきま)ふべし。