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水野南北 著 「修身実験録 一名・出世の直道」を読む その31 修身実験録&意訳(問答16)

問て曰く、

先生は飲食だに慎むときは、病身も健康に易はり、短命も長命と変ずと教へたまふ。然るに予は若年より暴食して兎角に控へ慎みがたし。是れ習ひ性となるとは云ふものの、畢竟その変じ易はる道理を的(たし)かに悟らざる故なり。願くば、真実の道理を示したまへ。

 

答て曰く、

 身体は家のごとく心は家の主のごとし。父母は身体の家を健かに生じたまふといへども、わが心の主賤しきゆゑに、飲食の慎みなく、不養生にして病を生じ、終に身体の家を損す。これを病身といふ。然るときは心の主、寒暑暴風雨を凌ぐこと能はざるゆゑに、止むを得ずして家を出づ。これを短命といふなり。かかる道理を知りながら、なほ好みて暴食をなすものは、わが家を敵として礎をこぼち柱を折り桁梁(けたうつばり)をきり、垂木屋根をやぶるが如し。夫れ人として己が身の大切なことを知らざるは、その無智なること飛びて火に入る夏の虫にひとし。かかるものは天下にあるも、何の用にか立たん。世に穀つぶしといふは是れにて、賤むべきものの限りなり。汝はかくのごとき穀つぶしとなることを願ふか。若し然らずば、すみやかに心を改めて、三年食をつつしむべし。三年食をつつしみてなほ運気開かずば、天地に理なし。世界に神なし。鐘鼓に音なし。されば南北は天下の賊たらん。