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水野南北 著 「修身実験録 一名・出世の直道」を読む その26 修身実験録&意訳(問答11)

問て曰く、

我れ高名を取らんと欲して心を慎み身を守るといへども、運次第にあしくなりて今は大いに窮するにいたれり。運の吉凶は慎みにはよらぬものにや。誠の強運ならば慎みあしくとも発達すべきものなりや。

 

答て曰く、

一道に秀づるものは、慎をかたく守るといへども、天よりますます窮せしむることあり。是こそ道に一心を凝らしめんが為なれ大人はこれを労とせずして、ますますその道をおこなふゆゑに、終に美名を天下に発す。小人はこれに気づかざるが故に心みづから乱れて慎を忘れ天を怨む。さればますます困(くるし)みて、終に名をなすこと能はざるものなり。汝心を慎むといへども、未だ飲食の慎みを知らず。これを慎むものは心乱れず。心みだれざれば、堂に上りて室に入ること疑ひなし。夫れ運は循るの義にして、吉凶ともみな己れがなすに随ひて循り来る謂ひなり。又運は運ぶとよみて我が行ふところの善事幽なりといへども、これを積むことを怠らず、次第に陰徳を天に運びおくときは、終に大いなる善事となりて、天より顕はに陽報を運び至る謂ひなり。これを善者に貧窮の敵なしとはいふぞかし。