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水野南北 著 「修身実験録 一名・出世の直道」を読む その29 修身実験録&意訳(問答14)

問て曰く、

先生は、朝起をなせば天運つよくなりて人事かならず発達すと教えたまへども、予おもふに人の運命は、天より受け得たるところに限りあるべければ、たとひ朝起をすとも天賦をこえて強くなるの理あるまじと思ふはいかに。

 

答て曰く、

朝は陽気発達の時にて朝日はもつともその吉粋なるものなり。さればこの光と気とをうくるものは、心気おのづから健なり。心気すでに健かなれば、運命もまた強くして、発達すること疑ひなし。これに反して朝寝するものは、生涯を七分はまづ寝てくらすなり。なほ残る一分は飲食についやし。なほ一分は遊興につぶし、残る一分を勉強の時とす。それ人いかに才気あるものにても、十分その一分だけの勉めを以て立身出世せらるべしや。よく思ひみるべし。されば朝寝をしていたづらに夜をふかすものは、是れ陰陽の賊なり。陰を陽にかへて遊び、陽を陰にかへて寝るゆゑに、運命の開くべき道理なし。日輪はすでに廻りて、寅(今の午前五時)に向ひ給ふに、人は子の刻(今の午前零時)のごとくに寝いり、漸く辰の刻(今の午前九時)にいたりて眼をさまし、食事を仕廻ひ、それより家業にかかれば、はや巳(今の午前十一時)牛(今の午後零時)と時刻おくれて心そぞろに世話しきまま諸事滞ることおほし。かかる有様にては何とて運の開くべきや。依て開運発達せんと思ふものは、貴賤ともに朝寝をいましめ、家業をはげみて、あはせて飲食をつつしむべし。