断食・菜食・健康法などなど

断食・菜食・健康法の実践と関連書籍の案内

水野南北

水野南北 著 「修身実験録 一名・出世の直道」を読む その39 修身実験録&意訳(跋)(終)

修身実験録跋(ばつ) 先輩の曰く國の財用は、土地と民力との二つを根本として生ずるものなり。この外さらに出所なし。故に一國の財用は、土地の大小民力の多少によりてその程限あり。この故に入るを量りて出づるを制するは、経済の定法なり。此のほか更に財…

水野南北 著 「修身実験録 一名・出世の直道」を読む その38 修身実験録&意訳(増補)

人天命にあらずして死するものあり。寝起の時を定めず、食事を程よくせず、働を過ごし、又遊びに過ぐる時は、病氣を生じ、常命を保つこと能はずして死すと、孔子家語といふ書に見えたり。 いま人ありて隋候の珠といふ重寶(宝)なる珠にて、千仭(一仭=七尺…

水野南北 著 「修身実験録 一名・出世の直道」を読む その37 修身実験録&意訳(問答22)

問て曰く、 われ家業を種々に改め易ふるといへども、つひに榮(栄)ゆることなし。これその業の予に相應(応)せざるがゆゑならん。請ふわれに適當(当)の業を教へたまへ。 答て曰く、 これ業が汝に相應せざるにあらず。汝が業に精錬せざるがゆゑなり。いづ…

水野南北 著 「修身実験録 一名・出世の直道」を読む その36 修身実験録&意訳(問答21)

問て曰く、 心の慎みもなくして、勝手に吝嗇をはたらくといへども、次第に福有の身となるものあり。されば人の禍福は、あながちに慎みばかりにも因らぬものにや。 答て曰く、 これ吝嗇よりして食を減じたれども、その食べたきものも食べずして預けおきたる所…

水野南北 著 「修身実験録 一名・出世の直道」を読む その35 修身実験録&意訳(問答20)

問て曰く、 先生常に教へたまはく。肉を好みておほく食するものは、心濁ると。予はこれを食すれども、心濁らざるはいかに。 答て曰く、 かねて食量を定めたるものといへども、肉あれば食すすみて、思はず食べすごすものなり。これ心を濁すの本なり。恐れ慎む…

水野南北 著 「修身実験録 一名・出世の直道」を読む その34 修身実験録&意訳(問答19)

問て曰く、 われ性質多病にして、常に食に味なし。いかがすれば食うまくなるべきや。 答て曰く、 これ性質の多病なるにあらず。宿食の病なり。腹中食気すすまざるがゆゑに味なきなり。さればつとめて食量を減じて三椀のものは二椀に、二椀のものは一椀にすべ…

水野南北 著 「修身実験録 一名・出世の直道」を読む その33 修身実験録&意訳(問答18)

問て曰く、 諸々の食物中に五穀に外貴きものは何物なるべしや。 答て曰く、 五穀の外に貴きものは鹽(塩)なり。鹽は世界の土気の凝りてなれるものなり。されば大海にあるのみにあらず、大地に充満して在らざる所なし。五穀萬食ことごとく五味を含まざるもの…

水野南北 著 「修身実験録 一名・出世の直道」を読む その32 修身実験録&意訳(問答17)

問て曰く、 予若年より心をいましめて悪をなさず。ただ人を助くることをなすといへども、予を用ふるものなきはいかに。 答て曰く、 およそ無情のものたりとも、みだりにこれを費し捨つれば、その報い自然にめぐり来て、吾もまた世に捨てらるるなり。是は人と…

水野南北 著 「修身実験録 一名・出世の直道」を読む その31 修身実験録&意訳(問答16)

問て曰く、 先生は飲食だに慎むときは、病身も健康に易はり、短命も長命と変ずと教へたまふ。然るに予は若年より暴食して兎角に控へ慎みがたし。是れ習ひ性となるとは云ふものの、畢竟その変じ易はる道理を的(たし)かに悟らざる故なり。願くば、真実の道理…

水野南北 著 「修身実験録 一名・出世の直道」を読む その30 修身実験録&意訳(問答15)

問て曰く、 予は諸事倹約を旨とせしより、衆人にあしく思はれ、下人等そだちがたし。されば今より倹約をやめ申さんか。いかが。 答て曰く、 汝は倹約と吝嗇とを取りちがへしものと見えたり。汝の謂ゆる倹約は、下人に飲食をひかへさせ、與ふべき金銀をも與へ…

水野南北 著 「修身実験録 一名・出世の直道」を読む その29 修身実験録&意訳(問答14)

問て曰く、 先生は、朝起をなせば天運つよくなりて人事かならず発達すと教えたまへども、予おもふに人の運命は、天より受け得たるところに限りあるべければ、たとひ朝起をすとも天賦をこえて強くなるの理あるまじと思ふはいかに。 答て曰く、 朝は陽気発達の…

水野南北 著 「修身実験録 一名・出世の直道」を読む その28 修身実験録&意訳(問答13)

問て曰く、 我若年より運あしくして、大いに心労す。思ふに生涯我れに具はれる天運はなきものならんか。いかが。 答て曰く、 世界の人我れに天運なしとて、歎きて天を怨むもの多けれども、人として程々の天運をうけぬものあらじ。すべて人は天の陽火をうけて…

水野南北 著 「修身実験録 一名・出世の直道」を読む その27 修身実験録&意訳(問答12)

問て曰く、 人に衣食住の三つあり。食だに慎むときは、衣食住家は華美なりといへども、その徳を損すまじきや。 答て曰く、 衣食住とも分限相応なるをもって吉とす。分限不相応に華美をつくすものは、表をかざる人なるが故に、内労おほし。これに反して分限よ…

水野南北 著 「修身実験録 一名・出世の直道」を読む その26 修身実験録&意訳(問答11)

問て曰く、 我れ高名を取らんと欲して心を慎み身を守るといへども、運次第にあしくなりて今は大いに窮するにいたれり。運の吉凶は慎みにはよらぬものにや。誠の強運ならば慎みあしくとも発達すべきものなりや。 答て曰く、 一道に秀づるものは、慎をかたく守…

水野南北 著 「修身実験録 一名・出世の直道」を読む その25 修身実験録&意訳(問答10)

問て曰く、 釈尊は雪山に於て修行ましませし時、粟六粒を以て一日の食とし給ふといへり。粟六粒にて身体を養ふことを得べしやいなや。 答て曰く、 凡そ生あるものの食を須(ま)つは天地の道理なれば、たとひ釈尊といへども粟六粒にて一日の性命を養ひ給はん…

水野南北 著 「修身実験録 一名・出世の直道」を読む その24 修身実験録&意訳(問答9)

問て曰く、 先生は朝寝せずして早天より起き働くものは必ず開運疑ひなしと教へたまへども、予は工人なるが故、夜業をなすことを幼年よりの常とす。依て早天に起ること能はず。いかがせば可ならんや。 答て曰く、 夜業をすること大いに悪し。夜分二時間仕事を…

水野南北 著 「修身実験録 一名・出世の直道」を読む その23 修身実験録&意訳(問答8)

問て曰く、 我れ飯は先生の教のごとく慎みひかゆれども、生得酒好なるがゆゑ、酒のみは慎むこと能わず。されども酒は飯の副物(そへもの)なれば、命数に障るほどの災はあるまじきや否や。 答て曰く、 酒は少しく飲むときは、気血をめぐらし、精神を爽かにす…

水野南北 著 「修身実験録 一名・出世の直道」を読む その22 修身実験録&意訳(問答7)

問て曰く、 人の食に於けるは最上の楽みなり。今先生の説に随(したが)ひて食べたき物をも食べ得ずば、生きて生きたる甲斐なきに非ずや。 答て曰く、 人の楽みに於ける数限りなけれども、官員は忠誠を盡して高官に進まんことを楽み、農夫は耕作を勉めて田禄…

水野南北 著 「修身実験録 一名・出世の直道」を読む その21 修身実験録&意訳(問答6)

問て曰く、 我近年多病にして、次第に困窮す。尤も別家親類等は皆富家なりといへども、更に我を助け護るものなし。如何せば可ならん。 答て曰く、 人を便(たより)にすること大いに非なり。おのが身はおのが慎みによりて吉凶あり。人の知るところにあらず。…

水野南北 著 「修身実験録 一名・出世の直道」を読む その20 修身実験録&意訳(問答5)

問て曰く、 予は若年の時より運開けて身安かりしが、近年にいたりては、作る事爲す事一として凶ならざるはなし。これいかなる道理にして如何せば可ならん。 答て曰く、 汝若年より福満ちて、心増長したるが故に、天より自然と欠きたまふなり。自然と欠くるに…

水野南北 著 「修身実験録 一名・出世の直道」を読む その19 修身実験録&意訳(問答4)

問て曰く、 予は大望あるが故に、常に美味酒肉を喫して元気を培養し、時至り運開けなば、名を天下に轟かさんとす。しかるを若し先生の説きたまふごとく、粗食小食をしたらんには、元気おとろへ身体よわりて、かならず大事を成しがたからん。この事非なるべし…

水野南北 著 「修身実験録 一名・出世の直道」を読む その18 修身実験録&意訳(問答3)

問て曰く、 先生近来はしきりに飲食の事をのい弁じたまへども、飲食も常に腹に飽かしめざれば、美味を見し時、たべたしとの食念を引きおこして、なかなかに餓鬼趣の衆生にも似やせん。況や食は生命を養ふの尤も大切なるものをや。 答て曰く、 食は固より生命…

水野南北 著 「修身実験録 一名・出世の直道」を読む その17 修身実験録&意訳(問答2)

問て曰く、 陰徳をつむ事は、実に陽報をうくるの基なるべし。されば衣食財宝などを施すかたに利おほからんか、又は放生をするかたに利おほからんか。 答て曰く、 利をえんとて施をおこなふは、大いに非なり。夫れ財宝は天下の財宝にて、我が物にあらざれば、…

水野南北 著 「修身実験録 一名・出世の直道」を読む その16 修身実験録&意訳(問答1)

或人問て曰く、 先生は観相の大家なるに、近来は飲食を厳かに定むることをのみ論じて、かへりて吉凶を弁じたまはず。吉凶を弁ぜざれば、相者の体ありて用なきがごとし。平生の技量何の効をかなさん。請ふ今より古人の書を講じて、あまねく相法を論じたまへと…

水野南北 著 「修身実験録 一名・出世の直道」を読む その15 修身実験録&意訳

博学多識にして心気萬人に勝れたるを豪傑とはいへど、いまだ徳者とはいふべからず。されば常人にして豪傑とよばるることは、なし得べからざれども、徳者とはならるるものなり。夫れ常人学者を論ぜず、行住坐臥他念なく慎みを専らとし、天地を書籍とし、日月…

水野南北 著 「修身実験録 一名・出世の直道」を読む その14 修身実験録&意訳

病身の人は日々かならず平旦に起き出で、日出に向ひて虚心平気に日拝すべし、然るときは身体健かにして、長寿を得るなり。これ気を養ふの仙法にして無病長命となること疑なし。われ二十五歳の時、行脚して奥州に至り、金華山の辺りにおいて異人にこの仙法を…

水野南北 著 「修身実験録 一名・出世の直道」を読む その13 修身実験録&意訳

夫れ相は誠を以て本とす。されば一心誠ならざるときは、善き相も悪きに変ず。一心誠なるときは悪き相も善きに変ず。この故に相は活物なり。若し福相のものことごとく福分ありて、貧相のものことごとく貧賤ならば、死物にして論ずるに足らず。されば貧福は慎…

水野南北 著 「修身実験録 一名・出世の直道」を読む その12 修身実験録&意訳

運つよくして家さかんなりといへども、築山泉水等に善美をつくせる家は、かならず隆盛なりといふべからず。また庭前に花壇をきづきて、珍卉名花を培養するも宜しからず。是等は天地の徳を損するが故なり。夫れ地は萬物の母にて、種子だに下さば生殖せざるは…

水野南北 著 「修身実験録 一名・出世の直道」を読む その11 修身実験録&意訳

無用火(むだび)をたき、或は火を粗末にして踏み消し、また燈火の明るきを好みて、みだりに油をさすものあり。かくの如き人は生涯出世することなく、諸事調はざることをつかさどる。夫れ火は物を熟する要物なり。一日これを用ひざれば人命を養ひがたし。そ…

水野南北 著 「修身実験録 一名・出世の直道」を読む その10 修身実験録&意訳

一家の主はその家の守護神なり。家運尽くるといへども、食を厳重に定るときは亡ぶることなし。運尽きて家亡ぶるは、その主の奢るゆゑなり、それ食尽くれば禄おのづから尽く。このゆゑに家禄のために己が食を減じて天地へ遺すときは、禄おのづから延ぶるなり…