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水野南北 著 「修身実験録 一名・出世の直道」を読む その9 修身実験録&意訳

人厄難の相ありといへども、常に食を奢らず、厳重に量を定るものは、かならず免がるることを得べし。わが食する内、半椀を減じて三年を経なば、短命は長命と変じ、貧者は福者と易はること疑なし。

 

世に常に大食しながら、次第に痩せるものあり。この類は食より病を醸し出して死を待つの人といふべし。満腹の後は気重くなりて、おのづから眠気さし、覚めて身だるく面おもきを覚ゆ。これみな総身の肉脱する兆候なり。尤も心気強きものは、大酒大食すれども、肉脱せざるなり。されども血気発生の機をうしなひて、身体意のごとくならず。およそ体痩地にして大食する人に、発達するものは天下に少なし。

 

常に肉食を好みて、しかも多分に食ふものは、寿をたもちがたし。程よく食へば、性命を養ひ寿を保つのみならず、魚鳥もその本来に帰るがゆゑに、却て慈愛なり。しかれどもみだりに食するものは、病を生じて命を亡ぼす。そは魚鳥といへども、我が命を棄ててその用を達せざるゆゑ、本来に帰ること能はざるなり。さればみだりに殺生せざれば、殺生しながら殺生戒を持つといふなり。人老にいたればその体おとろふ。故に肉食を以て養ふも妨げなし。しかれども節をまもるを以てその要とすべし。