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水野南北 著 「修身実験録 一名・出世の直道」を読む その10 修身実験録&意訳

一家の主はその家の守護神なり。家運尽くるといへども、食を厳重に定るときは亡ぶることなし。運尽きて家亡ぶるは、その主の奢るゆゑなり、それ食尽くれば禄おのづから尽く。このゆゑに家禄のために己が食を減じて天地へ遺すときは、禄おのづから延ぶるなり。ここに至れば亡ぶることなし。

 

人貧窮となれば早く貧を満たすべし。然すれば窮まれば通ずるの道理にて、おのづから幸福の方に向ふべし。然るに世人ややもすれば、現在に貧苦を悲しみて色々と表をかざり、邪智姦謀を以て、矢庭に福を掴まんと企つるゆゑに、なほなほ徳を損じてますます貧苦に沈み入るなり。されば人は福を掴まんと足掻くよりは、徳を天地に種んことを勉むべし。天地の憐みをだに得ぬれば、福徳は招かざるにおのづから来る。

 

水を無用につかひ棄つるものは長命を得がたし。若し長命すれば次第に貧窮となるなり。それ水は木を生じ物を養ふの本なり。その本を費しへらせば、生じ養ふの道をそこなふ。宜く畏れ慎むべし。これを慎みてみだりにつかひ棄てざるものは、命と福とおのづから随ひ来らん。