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水野南北 著 「修身実験録 一名・出世の直道」を読む その8 修身実験録&意訳

食定まらざる者に乱心多し。面貌に乱心の相あれども食正しく量定まれば発することなし。是故に乱心して憑物せし如く口ばしると雖も、それに頓着せず、日々三度の外に少しも飲食を与えず、厳重に食を定むること百日に至れば、おのづから治すべし。それ食は精神を養ふ本なり。その本乱るれば、心もおのづから乱るるは是れ当然の理なり。

 

食量定まるといへども膳部分限よりおごるものは、発達昇進なりがたし。膳部はおのが分限によりて、上等は上等下等は下等の差別あるべし。故に食は禄に応じて食満つるときは禄おのづから欠くるなり。身下官にありて上官の食をくらへば、食を以てその官をみたす。是を以て終に厚禄に進むことなし。

 

働人は大いに稼ぐといへども常に大食す。故に日々天地に食物の借りを生ず。されば生涯はたらきどほしにて終る。その借りあるゆゑに、働かざれば食つくるなり。但し大食して働くといへども、倹約をまもるものは、その内におのが天禄を延ばすがゆゑに、自然と余禄ありて安し。されど日々安らかにその業をつとむるのみにて立身出世することなし。ただ倹約をまもりて、少しにても天より受け得たる食物をのばし、これを足代として立身出世の道にすすむべし。それ人衣食をも十分にし、したき事をも十分にして、立身出世をのぞむものは愚なり。およそ物足りて事足るものは天下にあらじ。