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水野南北 著 「修身実験録 一名・出世の直道」を読む その12 修身実験録&意訳

運つよくして家さかんなりといへども、築山泉水等に善美をつくせる家は、かならず隆盛なりといふべからず。また庭前に花壇をきづきて、珍卉名花を培養するも宜しからず。是等は天地の徳を損するが故なり。夫れ地は萬物の母にて、種子だに下さば生殖せざるはなし。されば庭廣ければ果樹菜蔬の類をつくりて人命を生養せしむるこそ善けれ。これを天地の徳を積むといふなり。本来天地は陰陽相感じて物を生じ、以て人命を養へり。今その徳をおのれより作りたすくるは、すなはち是れおのれが徳なり。この貴き徳をおそれ慎まずして、みだりに耳目の楽みにふけるゆゑに、自然と徳を損じて発達せず。悲いかな。

 

古に曰く、水は方円の器に従ひ、人は善悪の友によると。誠なる哉。よき人に交はれば、おのづからよき人となり、あしき人に交はれば、おのづからあしき人となること。されば平民にして高位高官の人と交はれば、その心おのづから高位高官を気どりて、知らず識らず高ぶるやうになるものなり。それ身は平民にありて心高官のごとくなるは、己が分限を知らぬものなり。高位高官に交はるを以て身の誉れとするものなり。斯くのごときは、大いにその徳を損するのみならず。おのが業をも勤むること能はざるがゆゑに、大いにその家をそこなふ。