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水野南北 著 「修身実験録 一名・出世の直道」を読む その16 修身実験録&意訳(問答1)

或人問て曰く、

先生は観相の大家なるに、近来は飲食を厳かに定むることをのみ論じて、かへりて吉凶を弁じたまはず。吉凶を弁ぜざれば、相者の体ありて用なきがごとし。平生の技量何の効をかなさん。請ふ今より古人の書を講じて、あまねく相法を論じたまへと。

 

答へて曰く、

われ不幸にして貧窮の家に生まれしゆゑに、文字を学び書籍を読むことあたはず。また先生に随ひて相書を聞くといへども、日数わづか三日に足らず。我慢にして古人の糟粕をなむるを嫌へり。然るに門人中に学者ありて、今より三年以前に、予に大学の三綱領を説き聞かせたり。その時予は四十七歳なりしが、これによりて始めて相法の明徳をひらき、相法は即ち身を修め天下を治むるの大道なることを悟り、その道を釈(と)き明かさんために、衆人を集めて吉凶を弁じたり。近年来人を導くのみにて、吉凶を弁ずることの少なきは、唯飲食の慎みは、相道に入るの根本なることを悟りて、心身を治めしめんが為なり。夫れ悦ぶも食、悲むも食、萬善萬悪みな食を以て本とす。豈恐れ慎まざるべけんや。