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水野南北 著 「修身実験録 一名・出世の直道」を読む その2 修身実験録&意訳

修身実験録 一名・出世の直道

                   故人 水野南北 原著

                 梅巷女史 棚橋絢子 編輯

 

夫れ人の性命は食を以て本とす。仮令(たとひ)良薬を服すといへども、食をなさざれば性命を保つべからず。故にまことの良薬は食なりと知るべし。予数年観相を以て業とすといへども、食の貴きことを知らずして、みだりに人を相せしゆゑに、貧窮短命の相にして福有長寿の者あり、富貴延命の相にして貧窮短命の者あり。相法によりて吉凶を弁ずれども、実際のところを明白に定むることあたはざりき。後に此の事は全く食を慎むと慎まざるとにあることを悟り得てより、人を相するにまづ食の多少を聞きて、是によりて生涯の吉凶を弁ずるに、実に万に一失なし。故にこれを予が相法の奥義とは定めぬ。爾来人に伝へてためし見るに、一箇年さきに大難ありと見極むるものも、その時より食を厳重に慎めば、必ずこれを免れ、かへりてその年のあたりて思はぬ吉事の来ることあり。或は生涯貧窮の相なりといへども、ますます食を慎むものは、相応の福有となりて、大いに人に用ひらるるものあり。また数年病身にて短命にきはまるものといへども、食を慎むより身心健やかにて、老年にいたるも病なきものあり。凡そかくの如きの類あげて数へがたし。要を取りていはば、富貴貧賤、寿夭窮達、立身出世、みな飲食を慎むと慎まざるとに在るなり。この書を読み見ん人は、かならず食を慎みたまへがし。

 

 

<意訳>

 人の命は、食が基本である。たとえ良い薬を飲んだとしても、食べなければ命を保つことはできない。

したがって、本当の良い薬とは食であるということを知らなければならない。

 

ワシは、何年も観相を仕事にしていたが、食が貴いことを知らなくて、みだりに人相を観ていたため、貧窮短命の人相なのに福徳長寿の者や、富貴延命の相なのに貧窮短命の者がいた。観相法によって吉凶を論じたが、実際のところ明白に吉凶を定めることができなかった。

のちに、この事は、全くもって食を慎むか慎まないかによることを悟ってから、人相を観るときに、まず、食の多少を聞いて、これによって生涯の吉凶を論じたところ、まったく外れることがない。

したがって、これをワシの観相法の奥義とした。

 

以来、人に伝えて、ためしに観てみたところ、一年先に大難があると見極めた者も、その時から、厳重に食を慎んだならば、かならずそれをのがれることができ、かえって、その年に思わぬ吉亊がくることがあった。

あるいは、生涯貧窮の人相であるといえども、ますます食を慎む者は、相応の福徳を得て大いに人に用いられる者がいた。

また、何年も病気で死にそうな者であっても、食を慎むやいなや身心が健やかになり、老年になっても病気がない者がいた。

およそこのようなたぐいの話が数えきれないほどある。

 

つまり、要点を言うと、富貴貧賤、寿夭窮達、立身出世、みな飲食を慎むと慎まざるとにある。

この本を読む人は、かならず食を慎みなさい。